2016年1月18日月曜日

安全にお金が必用な理由

イーエスピーは1月15日未明の事故を受けて
国土交通省がおこなった特別監査で違反が
約20件見つかりました。
貸切バス料金は264,000円の下限料金を大きく
下回る19万円だったそうです。

観光バス業界や国内旅行業に携わる方々から
見れば驚くことのない想定内の範囲だと思います。
ただ大手旅行会社や大手バス会社は2014年
6月の運賃改定以降はコンプライアンスの観点から
遵守していると聞いています。逆に言うと最近まで
大手でさえ運行コースや料金でルール違反は
おこなわれていました。特に酷かったのは運賃
についてです。

問題は関越道事故を受けて2014年6月以降
体質を変えられたかどうかです。
たとえば毎年15万円でバスを利用してた顧客が
今年は最低運賃が30万だったとして、それで
利用してもらえるかどうかです。
結局は顧客引きとめのためにダンピングを
してしまうということが考えられます。
ただ、今回イーエスピーが酷かったのは、社長
自らがまったくこのようなことを知らなかったことです。
一般貸切旅客事業者の長が、まったく新しい
ルールを知らないというのは呆れてしまいます。

観光バスは通常は朝から夕方までの貸切が多いので
朝6時から7時に出庫して、夜7時から8時に入庫する
ケースが多く、出庫点呼は早朝、入庫点呼は夜のため
特に朝の点呼を遅刻するのはわからなくもないですが
夜行バスですから夜9時頃の点呼と思いますが、
それに遅刻する意味もわかりません。

ちなみに「安全のためバス運賃を適正に収受しなければ
ならない」ということで、なぜ「安全」が「お金」に関係するか
というかと、たとえば点呼をする「運行管理者」を適正に
配置するためでもあります。たとえば早朝の点呼と
夜の点呼を毎日1人では賄えず、3~4名雇用する
必用があるのです。
乗務員も同様で、現在観光バス会社で保有車両数以上
正社員の乗務員が雇用されている企業は一握りです。
つまり夜行バスのように1台に2名の乗務員を用意すると
乗務員のローテーションが過酷になります。
これを緩めるためには乗務員を増やすことなのですが
安い給与では募集に応じてもらえません。
これらを実施するためには運賃が19万円では実現
できないから、制度がかわったのです。

今回の事故のツアーは1泊の宿泊とリフト1日分で13,000円
くらいが主流だそうです。ツアーの最少催行人員は30名
なので下限運賃を30で割ると8,800円でこれに高速代と
乗務員の宿泊経費が1,600円くらいとすると、その時点で
1万円を超え、これに宿泊代を加えて13,000円に収まる
はずがありません。
ということは現在催行されている他のツアーもすべて
違反していると見て間違いがないのに、放置している
国土交通省にも責任があるのではないでしょうか?